アトピー性皮膚炎の注射薬、『 デュピクセント®( デュピルマブ )』について
ー ご案内 ー
アトピー性皮膚炎は湿疹がよくなったり、悪くなったりを繰り返すつらい疾患です。
治療のゴールは症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態を維持することです。
デュピクセント®は2018年に発売されたアトピー性皮膚炎に対する初めての生物学的製剤です。発売から2024年で6年が経過し、副作用が少なく、効果の高い薬として評価されている薬剤です。
ステロイド外用薬やかゆみ止めの内服薬などを半年間、十分に使用しても改善しない生後6か月以上の方で中等症以上の患者さんが使用できる注射薬です。
IL-4,IL-13というサイトカイン(細胞間の上方伝達物質)の働きをブロックして皮膚の炎症を抑え、かゆみや湿疹を改善させます。
当院で注射の打ち方を指導させていただき、ご自宅で2週間に1回の注射を行うことで、良い状態をキープできる可能性があります。
『 デュピクセント® 』の治療対象となる方
①生後半年以上でアトピー性皮膚炎の症状が中等症から重症の方
※当院では乳幼児の患者さまはご紹介させていただいております。
②通常の治療(ストロングクラス以上のステロイド外用薬や抗アレルギー薬の内服など)を半年以上行っても効果が不十分の方
③本剤治療中にも症状に応じて外用治療を継続できる方
※アトピー性皮膚炎の症状が軽症の方、注射製剤のみを投与希望の方には適応がありません。
『 デュピクセント® 』治療のメリット
①外用薬を塗る手間や量を少なくする
⇒生活が変わります!
②ステロイド外用薬のランクを下げることができる
⇒レスステロイドを目指す!
③皮膚症状を改善させ、生活の質を上げることができる
⇒かゆみがつらく、色々なことを我慢していた生活から解放される!
☆熟睡できる ☆勉強、仕事に集中できる ☆ファッションを楽しむ など
『 デュピクセント® 』投与に注意が必要な方
①寄生虫感染のある方
②生ワクチンを接種する方(成人を対象とした生ワクチンは麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ)
③妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
④高齢の方
⑤喘息などのアレルギー性疾患のある方
デュピクセントの投与により、アトピー性皮膚炎以外のアレルギー性疾患の症状が変化する場合があります。
アレルギー性疾患、特に喘息がある方は必ずお伝えください。
また、喘息をみてもらっている医師にデュピクセントを使用していることを必ずお伝えし、自己判断で治療薬を中断、減量しないでください。
『 デュピクセント® 』の副作用について
・過敏反応(ふらつき、息苦しさ、関節痛、発熱、皮膚の痒みや赤み)
症状が強い場合はデュピクセント®の投与は中止となります。
・注射部位の発疹、腫れ、痒み(外用薬などで対応します))
・ヘルペスなどの感染症(抗ウイルス剤の投与などが必要となります)
・結膜炎(目や瞼の腫れ。2割ほどの方に起こる可能性がありますが、軽症な方が多く点眼薬などで対応となります。)
『 デュピクセント® 』の投与方法
◆デュピクセント®皮下注300mgペンは 「あてる、押す」の2Stepで投与が可能です。
◆投与開始日に600mg(2本)を皮下注射します。2回目以降は300mg(1本)を2週間に1回皮下注射します。
※初回と2回目は院内にて丁寧にご説明しますのでご安心ください。
『 デュピクセント® 』の注射部位
二の腕の外側やお腹、太ももなどです。へその周り、5cmは避ける必要があります。
◆正常な皮膚の部位に注射してください。皮膚が敏感な部位、皮膚に損傷、打撲や傷のある部位、アトピー性皮膚炎の強い炎症を伴う部位への注射は避けてください。
◆前回注射した部位とは違う部位に注射してください。
◆腹部に注射する場合は、左図のように上下左右で4ヵ所に分けて前回の注射とは別の箇所を選んで注射してください。
『 デュピクセント® 』の治療費
デュピクセント®1本(300mg)あたりの薬剤料
3割負担の方
61,714円
18,514円
(初回は2本:37,028円)
※別途、診察料、処方箋料、在宅自己注射指導管理料(1,860円)、導入初期加算(1,740円、開始後3ヶ月のみ)などがかかります。
※2週間に1回の注射が必要になり治療費が高額となるため、限度額認定証を作成しておくと医療機関の窓口での支払いを一定の金額までで抑えることができる場合があります。年収や入っている保険によって異なります。
※マイナンバーカードを保険証と紐づけておくと、限度額認定証がなくても支払が一定額で抑えることも可能です。
◆医療費助成制度
デュピクセント®投与にかかる治療費は高額となるため、さまざまな医療費補助制度があります。
医療費助成制度について詳しくは下記サイトをご参照ください。
>>デュピクセント®を使用される患者さんへ|サノフィ株式会社
◆高額療養費制度
1カ月の間に医療機関の窓口で支払うべき額(自己負担額)が一定の金額を超えることになった場合、自己負担額を一定額までに抑えることができる制度です。
◆多数回該当制度の仕組み
継続して高度な医療を受ける必要のある方には直近12カ月以内に3回以上高額療養費制度の適応を受けた場合(多数回該当)、4回目以降の月の自己負担の上限額がさらに引き下げられます。
当院での『 デュピクセント® 』導入の流れ
診察
(注射は予約制のため、即日の投与は行なっていません)
これまでの治療内容や症状の確認、写真撮影、採血なども行います。
初回
(1回目)
院内で2本注射します。1本はご自身で注射していただきます。
※受診前にお電話ください。冷蔵庫から薬剤を取り出し、常温に戻しておいた方が注射時の痛みが少ないです。
※初回投与後は副反応が出ないか、待合室で30分ほど経過観察をさせていただきます。
2週間後
(2回目)
院内で1本、できればご自身で注射していただきます。
4週間後
(3回目)
自己注射分の薬剤を処方。最大3ヶ月分(6本)の処方が可能です。外用剤も併用していただきます。
※薬局で薬をもらうときは保冷バックに入れてもらいます。2回目処方時からは保冷バックの持参をお願いします。
※使用した注射器は廃棄バックに入れて次回受診時に当院へ持参していただきます。
*注射はペン型になっており、ふたを外して体に押し当てるだけですので難しくはありません。
*初回は2本、その後は2週間に1回、1本の投与を継続していきます。
*1回の注射後、2週間程度で効果が認められる方もいますが、4ヶ月で効果がなければ投与を中止することもあります。
*調子が良くなれば、注射の投与間隔をあけることも可能ですが、その場合には医療費の補助から外れてしまうこともあります。
◆注射をするとやめられなくなるのではと心配される方もいらっしゃいますが、症状が軽快しても半年以上は投与継続をお勧めします。
その後は調子がよければ少し間隔をあけて注射を継続し、経過がよければ注射を中止し、経過観察する方もいらっしゃいます。
また悪化時に再度注射が必要となる方もいます。